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2005.10.15

ジョルジョ・ボッカ

「地獄」を3/4ほど読んで予感は当たってしまった。カンパーニアはナポリでの対話に聞こえる。
「信じられないようなことが起こってるんだ、宗教裁判所で審議してもいいようなことが。公共水道に入っていたあの黒い水だけれど、カモッラが私有化を急がせるためにやったらしい。暗黒社会が経済サイクルにも入ってきたんだ。君なんか、ナポリで起こってることはヨーロッパ全土に広まるはずもないと、たかをくくてるんじゃないか」「知るわけないだろ、クラヴェーリ君。この町は想像を絶してるんだ、悪夢も及ばないよ」
イタリア南部を回って取材したこの本は、イタリアの空気を伝えるに相応しいまさに混乱する価値の共存が、国家とカモッラ/マフィア/コーサ・ノストラ/その他の呼称の地方の平民の共犯関係を、様々な現場での色彩豊かな実例付きで色濃く映し出し、腐敗と収賄と私物化の手本を次々と示してくれる言わば公共事業を事業化するための許認可制度の必要と百花繚乱な法案による事業の保護と多角的な解釈とを保障する魔法のような手引き書だ。

「友達の友達」と票田とのビジネスにおける政治の関係での密接な共同歩調を、ひとつ日本式に解釈するなら、ATMをパワーショベルで奪う事件で逮捕者が少ないのは、壊されたマシンの納入業者が再度納入する時には法外な費用が請求されることで、誰かから誰かへの支払いが行なわれる仕組みになっていたと考えることが出来る。
逮捕者は、それのカムフラージュ。
それもアウトソーシングで、支払い額は解っても、納入する間で誰がどこでいくら懐に収めたかは判らない仕組みだ。

「地獄」、この本は近代国家イタリアを告発するために書かれたのではない。優雅に表現するならダンテの「神曲」にある風景を描いてみたに過ぎない。そのスケッチをしたモデルが南部イタリアだっただけだ。
公正を求める正義心。
金と権力を湯水のように着服しては使ってみせる厚かましさへの忍耐力。
そして、カターニアはナポリでの対話で遂に本題へと迫る。
悪夢も及ばない町だが、今やヨーロッパが、世界が、悪夢も及ばない暗黒を吐き出し、互いを黒く塗り潰してる。

この本を開いてから空気の匂いが「ユーロマフィア」へと繋がっているのを、ページを捲る毎に、その空気が濃くなっていくのを感じずにいられなかった。

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ブライアン・フリーマントル『ユーロマフィア』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4105365010

Posted by: katute | 2006.12.25 02:00 PM

イタリアの収益No.1はマフィア!?
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/071126/erp0711261710003-n1.htm

イタリアのパン業界牛耳るマフィアに、パン職人ら「パン」で反撃
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2317361/2395132

Posted by: katute | 2007.11.27 05:41 PM

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