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2005.11.23

シュニトケ 教養の在処

ヴァイオリンのヴァディム・グルッツマンのアルバム「time... and again」。

カンチェリ作品はクレーメル盤を、と思ってたが、ヴァスクスの小品集もあるので、永らくワゴンにあったのを引き取った。

演目は、シュニトケ(1934-98)「Suite in the Old Style」(72)「Fugue」(53)、ペルト(1935)「Fratres」(77/80)「spiegel im spiegel」(78)、ヴァスクス(1946)「Little Summer Music」(85)、カンチェリ(1935)「time... and again」(96)、ほぼ書かれた年代順に納められている。

作家の生年と作品の発表年を記したのは、作家が何歳で作品を発表したかを知るため。

初めカンチェリ作品に注目してたが、聞きながら認識を改めた。

このアルバムで最も注目すべきは、シュニトケの作風を知るうえでの古典形式の位置だろう。シュニトケは多様式主義と呼ばれたが、実は、その教養の発する所は古典形式にあったのだ、と初めて理解した。
前衛的と宣伝されて、シュニトケを誤解していた。前衛のための多様式主義として、古典形式を導入してたのではなく、古典様式を求めた結果、現代的になったのか。
シュニトケの場合は擬古典主義ではない。スタイルとしての古典様式であって、だからバッハのパロディではない。何をおいても、まず、それに瞠目させられた。これはシュニトケを紹介するに駄洒落タイトル小品が有名になったための弊害だろう。

取り敢えず他作品を俯瞰しておく。
たゆたうでもなく静かに流れていく。ペルトの音楽をこう演奏するのも悪くない。これは、この奏者が得意とするスタイル美なのかも知れない。この音の捉え方。
ヴァスクスは短すぎる、夏のエコーだろうか。
そしてタイトルのカンチェリ曲である。
クレーメルのために書かれ、シューベルト・チクルスで初演された。
以前からカンチェリが室内楽をどう書くのか気になってたが、冒頭からピアノを金管に置き換えれば交響曲と同じだ。音やスタイルに何も差はない。このアルバムで唯一ソヴィエト崩壊後に書かれた作品、副題に‘What I write is true,God knows that I am not lying’(Gal.1,20)とある。最近は晩年を意識した発言や表現が目につくが、音楽は独自の磁場を発するようにヴィジョンを抱かせる。ライナーにシュニトケ発言が引用され、カンチェリはミニマル音楽、のようなニュアンスがある。聖なるミニマル。何らかの霊性を認識させるもの。
選曲自体そうなんだろうけど、アルバム全体に夢幻な印象が多分にある。

シュニトケを、それ自体として特には聞いてこなかったので、照射対象をあげてるしか認識のしようがない。
そんな「古典主義者としてのシュニトケ」の印象を後押ししたのが、「ロシア音楽の二世紀 ボエーム」のタチアナ・セルゲーエヴァのアルバムだ。
これまた強烈な個性だが、眩学的な古典主義者だろう。

冒頭の協奏曲は二人の奏者のための作品で、ヴァイオリ、ピアノ、ハープシコード、オルガンの編成。でセルゲーエヴァ女史が鍵盤は全部弾いてしまうのだが、終楽章ではヴァイオリン奏者はピアノを弾くき、オルガンのフェードアウトが即興的についてるようだ。
曲の出だしはスクリャービン風に身振りが定まらないが、徐々におふざけが昂じていく。終楽章では思わぬクライマックスに神々しさを感じてしまう。もしステージ上を見るとしたら、その自己主張の強さに辟易したかもと思う。ピアノに始まりハープシコードをパラパラ遊び、王者オルガンを占有してヴァイオリン奏者にさえも鍵盤を弾かせてしまい、なかなかに鼻持ちならない。

そして飲酒歌集(?)は質の悪いおふざけか。なぜなら、作品効果は十分なんだが、ピアノは伴奏ではない。

サックス、チェロ、オルガンのためのダフネ。三者三様の姿態を見せる。そこでは、特殊奏法を多用することはなく、楽器能力をよく理解した筆致の展開となってる。オルガンはアナログなシンセサイザーなのか?

ピアノとオーケストラのための協奏曲。前半の音色の遊びはスクリャービンとベルクの融合なのか? 後半のアレグロはシチェドリンを思わせるが、ロシア・アバンギャルドを思い浮べることもできる。こうなるとコーダでトランペットを合図に舞曲風にまとまるのは、アンバランスな失敗と呼ぶよりも、悪ふざけではないだろうかと思えてくる。ピアノの解放弦で終わるのは旧い時代の実験精神ではないだろうか。

己を形成する上で、いかなる教養を身に付けるといかにおぞましいか、を経験的に思い知らされる感慨深いアルバムだ。
作品に罪はないので面白く聞いてるが。。。

このレーベルはソ連崩壊後に、不遇だった作家を取り上げてると聞いたが、傍流過ぎるだろう。
そういうこともあるな、という(自戒の念を込めて)些末な音楽を聞かせてくれるのだろうか。

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