マッシュルーム・カンタータ
このアルバムを聞く前に、チェロ協奏曲の入ったアルバムを聞いておいてほしい。
それには最後の交響曲、6番が入ってる。それまでの交響曲との傾向の違いを知っておくと役に立つ。
それまではcalmoだった音楽はfuriosoへと変貌してる。霧が掛かったような響きから荒々しい音楽へと変わった。
チェロ協奏曲がその良い例で、原始的な飾りっ気のないフレーズに技巧を盛り込んで古典音楽のような和音連打で曲を閉じる。これまでのスメラの音楽に馴染んできた者には戸惑いが隠せない。
変貌のヒントはmusica profanaと名付けられた大変にブルータルな作品にあった。世俗的音楽?とは何か。政教分離主義なのか。ある意味そうだろう。
で、カンタータである。
このアルバムの内容が実にすばらしい。
混声合唱と弦楽オーケストラのための協奏曲、わざわざ翻訳不可能と断ってる歌詞はオノマトペと名詞の羅列で、これを訳すとなると解釈になってしまうということだろう。音楽レベルで演劇的身振りを要求する作品だ。
次は唯一純粋な混声アカペラ・コーラス Though Your Homeland May Be in Dark For Long
そして、マッシュルーム・カンタータ。これは森の茸を様々に(もしかすると学術的にも)歌っているのだろう。ストラヴィンスキーと教会音楽が同居してる。
それにIsland Maiden's Song from the Sea 役者が台詞を喋るのでこれは音楽劇の類で、笑い声が上がってたのはこれだ。ここでの音はシサクスに近いだろう。
この二曲は混声合唱にピアノ、フルートと打楽器という編成で、効果的な音遣いだ。
スメラの音楽に声を載せると、こんなにも演劇的な響きになるとは知らなかった。
合唱といいながら、はみ出していくのがいかにもスメラらしい。
オルフとは違う方法論での異化作用だ。
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Comments
profanaと来たら、晩年のショルティが亡命後初めて里帰りするのをTVで見たことがある。その時にバルトークのカンタータ・プロファーナの歌詞を自己の境遇と重ねて説明したのがとても印象的だった。異郷に暮らすものの心情を理解するために、図書館にもCDがあるだろうから読んでみるといい。日本ではこうした感覚を理解するのは特別難しいかも知れないので。
Posted by: katute | 2006.05.15 10:24 AM