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2007.02.17

『アウステルリッツ』


"アウステルリッツ" (W・G・ゼーバルト)

この本については語り得ない。 書法としての重複引用の見事さや往き来する実在とメタファーの越境する幻視の世界、それを知りたければ自身が読書して体験するしかない。

昨日の帰りの電車で後書きをもどかしくめくりながら打たれたように感情が込み上げてきたのを覚えてる。
それまで近しくしていた尊敬してやまない、師であり友であった人物を喪失した堪え難い感情が、まるで深山の遺蹟の中のその墓の前にやってきたかのように、堅く本を握り身に引き寄せて向かい合っていた。その時間にすべての存在は姿を消し音も匂いもない空間に佇んでいた。
視線を感じて我に返ると滑稽なほど身を固くしているのだった。
押し潰されそうな程この巨大な喪失感はなんだろう。

この読書感は唯一無二だ。

前半の登り坂、中間のクライマックス、後半は畳み掛けるようにして個人的な語りの終焉を迎える。

日常生活の中からひっそりと一冊の本を抜き出して読む密やかな行為を、語り部の聞き手として記述されたさり気ない書物。

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