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2007.06.28

読了「ぼくには数字が風景に見える」

原書は"Born on a Blue Day: Inside the Extraordinary Mind of an Autistic Savant" (Daniel Tammet)だが、店頭で翻訳『ぼくには数字が風景に見える』を見たので、そっちを買って読んだ。
サヴァン、アスペルガー、共感覚の持ち主である著者、ダニエル・タメットが自分の半生を丹念に綴った本。2年くらい前に、TV番組が放映されたそうだが、残念ながら見ていない。今年の8月に再度放送するらしい。
著者、ダニエルのモノローグを隣で静かに聞くような、読書だった。
映像がくっきりと浮かび上がる明確な記述。
共感覚による、数字の風景の幾何学的な様相。
まるで修得不可能な外国語の中で暮らすような不安。
彼の見ている世界は、まれに、感じられる事がある。例えば、割り算は螺旋を落ちて行く感じがする(彼はそれが見えている)とか、努力すると理解できる。その反面、もっと生理的な、触れている世界、聞いている世界は判りにくい。過敏症だけでは片付かないのは判るのだが、それ以上を想像できない。
そういった自閉症スペクトラム(アスペルガー)のために、自分が異質な存在と感じてきた著者の苦しみが主題の1つだ。世界から孤立しているという感覚を思春期までに、ほとんどの人が感じるが、それが、幼少時から、圧倒的に迫って来るとしたら、その孤独感に囚われて、鬱病にもなりかねない。しかも、自立できないと、自分も周囲も諦めつつあったとしたら、その先には絶望が見えてくる。
だが、それ以上に、その困難を克服した(しつつある)達成感、幸福を語った本でもある。
勇気を持って、困難に立ち向かうのは、「英雄」だけではない。非常に知能が高く、数学的に高度なサヴァンであるにしても、それだけでは、生きて行けないのは明らかだ。自立は出来ない、絶望していたと書いているが、実際には、周囲の助けよりも、自分で、少しずつ成功を重ねて、本人の立ち向かう力を高めて行ったのが良かったように思う。
アスペルガーの人は、外国に行く事で、吹っ切れるようだ(上手く生きて行ける)と聞いた事があるが、そう思われる節もある。
ついでだが、理性による信仰の説明も、判り易かった。
ラマチャンドラン博士らの研究にも協力していて、内面から、自閉症を語れるロゼッタストーンと自覚しているそうだ。
ちなみに、著者が立ち上げた語学学習サイト Optimnemを使ってみたくなった。共感覚を使った記憶強化や語学の学習は、確かに、サヴァンでない人にも応用できそうだ。


ついでに、『"クロスカウンター" (井上 尚登)』も読了。こちらは、スッキリ爽やかなコンゲームを題に取った話。作者のデビュー作程のスケールは無いけど、面白かった。
(若干補足した)

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Tracked on 2007.06.28 at 03:07 PM

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