« 読了『行動分析学入門 - ヒトの行動の思いがけない理由』 | Main | CD試聴メモ »

2007.10.02

読了『本当のTEACCH』


"本当のTEACCH―自分が自分であるために (学研のヒューマンケアブックス)" (内山 登紀夫)

あるメルマガで、『TEACCHでは自閉症は治らない』、『役に立たない理論が主流になって、自閉症を治せるABA(Applied Behavior Analysis, 応用行動分析)の本が少ない』という件を読んでモヤモヤしていた時に、偶然、目にして購入。 自分としては、TEACCHの手法と、ABAは、かなり近いと感じたし、ABA自体は、万能ツールであって、自閉症者のためのものという感じがしなかったので、随分気になっていた。

大妻女子大教授でよこはま発達クリニック院長の内山登紀夫氏によるTEACCHを解説した本。帯の推薦文は川崎医療福祉大学の佐々木正美氏。

第1章では、自閉症の障害内容について、また、対応するためのTEACCHの基本理念を示した後、実際に、ノースカロライナ州で行われているTEACCHセンターの歴史と活動を紹介している。
特に、一人一人の違いを見極めるために評価(アセスメント)を行って、その時点でベストの方法を使う(なので、構造化だけでなく、行動分析も、PECSも、使えるものは何でも使う)という事を強調している。
また、TEACCHセンターは、自閉症者にトータルなサポートを行うために、支援を行う専門家同士の連携もサポートする。
ただ、診断はかなり時間がかかり、スタッフも不足(自閉症者が増えてきているので)、予約で1年待ちだそうだ。
アメリカでも、メインストリームと呼ばれる、統合教育が主流。TEACCHセンターで学ぶ自閉症者はそんなに多くない(スタッフも少ない)。
P90のFAQと評価のサマリや両親へのアンケートでも、TEACCHの目標(と実際、普通学校に通って時々支援を受けるのが主体になっている状況)が何となく判る。
TEACCHは、自閉症者の人生のサポートを行うので、地域との連携を重視する。ジョブコーチとか。
実際の親へのインタビューもある。やはり、将来への見通しが持てた事が救いだったとの事。
また、TEACCHの支援を受けたくて移住してくる人達もいるようだ(州民は無料で受けられるTEACCHの評価も、州民でないと1200ドル掛かる)。まぁ、メディケイド等の医療保健で賄われているが、日本と比べて、施設当りの運営費用が20倍とか支給されているようだ。
また、お互いに連携するNPOのような「会社」の活動の説明もある。
第4章は、TEACCH創設者の故ショプラー博士、現在の責任者であるメジボフ博士へのインタビュー。
ショプラー博士のインタビューの中で、目を引いたのは、『(社会から切り離す事になりかねない)自閉症専門学校を作らないようにしてきた』、元々認知理論がベースにあり、自閉症者の視線にたって、対策を行うのがTEACCH。自閉症者のためになるなら、何でも使うという印象(改良した行動主義ではないとの事)。
メジボフ博士も同様、フィニッシュボックス等の構造化だけでなく、ABAも使うし、PECSやソーシャルストーリーも高く評価している。早期発見の話では、名前に反応しない、共同注意がない、等で、1歳前後で診断できるのではないかとの事。
P186からの『TEACCHへの批判と誤解に答える』の部分は必読。
「ゴールは普通の成人ではなく、自閉症のままでも、胸を張って生きて行ける人間」、「自閉症は克服の対象か(異文化としての自閉症を受け入れる)」、「特別な事は何もしなくて良いのか(その結果を直視していない教師が多過ぎる)」、「自閉症の子どもに葛藤は必要か(パニックと葛藤の区別がつくのか?パニックを乗り越える事を学んだとしても、他の場面でも、一生涯、乗り越え続けられるのか?)」、「TEACCHは行動主義か(『自閉症者の目を通してみる』姿勢が、行動主義者から科学的でないと批判されているそうだ)」等々。
P204に、著者の直接の執筆動機が書かれている。構造化にハマってしまっているような、中途半端なTEACCH信奉者に読ませたいと言う強い思いが伝わって来る。
自閉症の理論に基づいた支援方法を考えるのがTEACCHであり、現在の理論は完璧ではないので、これからもどんどん変わって行くという認識で、新しい理論や実践に常にオープンであり続け、自閉症支援の質を高めていきたいと。

|

« 読了『行動分析学入門 - ヒトの行動の思いがけない理由』 | Main | CD試聴メモ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12774/16635808

Listed below are links to weblogs that reference 読了『本当のTEACCH』:

« 読了『行動分析学入門 - ヒトの行動の思いがけない理由』 | Main | CD試聴メモ »