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2007.12.21

読了『グロタンディークとブルバキ』




"ブルバキとグロタンディーク" (アミール・D・アクゼル)


全体の構成は、ごたついた感があるが、そのまま、記すと次のような流れになる。
あまりにも、まとまりがないけど、この著者と相性が悪いのかもしれない。前作も、個人的にだめだったし。

グロタンディークの成人するまで、
ヴェイユの逮捕劇から過去に戻っての成人して数学者になるまで、
デュドネらの数学者になるまでのおさらい、
グロタンディークの数学者になるまで、
ブルバキの誕生とその当時の状況、
ブルバキの驚くべき集団の特徴(集団執筆、完全合意、悪ふざけ)と生産性について、
構造の概念の重要性の強調が続き、
各分野への浸透、
ボレルの紹介から始まって、ブルバキの第2、第3世代、グロタンディークの第4世代としての入会とそこからの決別、
レヴィストロース登場、トルベツコイとローマン・ヤコブソンの構造主義的言語学、レヴィストロースとヴェイユの出会い、郡論の応用、トルベツコイとローマン・ヤコブソンの構造主義的言語学の詳細、
サルトルとロランバルト、ピアジェ、ラカン、経済統計のレオンチェフ、
数学的操作で文学をやったウリポ、ここにはカルヴィーノも居た、
グロタンディークの神髄であるスキームとトポス(層、圏論と同値)、フィールズ賞の拒否、業績のおさらいと政治活動へのコミットのし過ぎ、
その後。
ブルバキの没落の原因。

貴族主義のヴェイユが嫌いなのか、ヴェイユを劣っているように、グロタンディークの下に置くのは、個人的には受け入れ難い。別のタイプの数学者ではないか。
個人主義対集団主義の対立の中で、個人の代表、グロタンディークを称揚していると感じる。
別分野での主な影響は、ヤコブソン、レヴィストロース、構造主義がメインとなっている。ウリポは知らなかった(聞いた事はあったが)がおふざけのように思える。
デリダやラカン、ジャン・ピアジェらはその仕事も紹介されるが、ソシュールに至っては、別世界の出来事の扱いで、簡単で何も言っていないに等しい。
ブルバキの失敗とその理由を色んな場所で、何度も書くのは鬱陶しい。最後の結論でも、結局、同じような事を書いているだけ。
構造主義(ブルバキ)が実存主義に取って代わった。
教科書はほとんどの最終稿がデュドネの手に寄るのは、教科書を使った身としては、頷ける。
新しい人物が登場するたびに、仕事を概観したら、次にその祖父等から人物紹介を始めるのは回りくどい。
層圏トポスなら、竹内外史先生とか日本の教科書も記した方が良かった。著者も訳者も知らないのか、ブルバキの構造主義を葬り去った筈の、肝心の圏論については、その実体をあまり書いていない。集合論の何が問題なのか(矛盾を孕んでるとあるだけ)も全然書いていない。ポアンカレの言葉でも引用すれば良かったのに。
ブルバキの仕事は、構造主義(集合論)による過去の数学の再構築なのだから、没落の事実やその原因を集合論への固執と捉えるのは正しいとは思うのだ。
でも、圏論で再構築しているというのも聞かないのだ。訳者がHaskellの紹介でお茶を濁したりしても、意味は無いと思う。
メモ:

ページ数と、メモ書き
36 ヴェイユ『...本当に価値があるのは真の偉人であり、その頭の中を知るには彼らの業績に直接触れなければならない』。妹もそうらしい。
38 「あらゆる数学のテーマについて非専門家よりはよく知っていて専門家ほどには知らない」指導教官のアダマールのように、万能数学者になろうと決断。共感するけど。
65 ヴェイユの嫉妬(根拠は書いてないように思うが)
80 この辺りでカントールらを総括しているが、短過ぎ。
95 ブルバキの執筆の動機としての当時の数学教育の状況の悪さを説明
107 論争と完全合意の紹介。この辺は、オープンソースと対照的なのか。通信手段や数学研究とソフト開発の違いなのか。でも、メインの成果がリインプリメンテーションと見れば、ブルバキとオープンソースは、ほぼ同じ事をしているように思える。新しい開発/研究成果も勿論あるんだけれど。
110 集合論(というか、構造という語と一緒くたにしてないか?)を基礎にした事。ヴェイユ主導による数学史だけが残ったとか。
116 構造の説明だが、これだけだと、圏と変わらない。群に限定する訳でもないし。
121 数学的構造の発見者、20世紀最大の抽象主義運動としての評価
128 ボレル、セール、ブルバキのさんか。
135 ブルバキは、エリ・カルタン以外のフランス数学者は、評価していなかったようだ。
136 1960年代に、グロタンディークらの第4世代が参加。だが後に袂を分かった。
146 レヴィストロースと構造主義。ロマンヤコブソンらの構造主義的言語学の紹介から。
150 ヤコブソンとストロースの交流。言語学から人類学が学んで学問になって行った過程。
160 ストロースの『親族の基本構造』の補遺として、ヴェイユが群論で構造を解析した。
170 ヤコブソンの来歴。
178 文芸でのバルトの仕事。
183 心理学でのジャン・ピアジェとデュドネの交流。それは知らなかった。
187 ラカンの精神医学。フロイトが思い描いた無意識の精神を絶えず循環する記号表現の連鎖、つまり、次々につながって行く衝動と欲求として描き直したのだった。無意識の記号表現を意識のレベルに持って来るというのは単なる幻想でしかあり無い。子供は、言語を通じて象徴的段階に入る事で、大人になるのである。
194 レオンチェフの計量経済学モデル。
196 文学グループ、ウリポ。これは知らなかった。カルヴィーノも参加。記号操作で作品を作るってだめだろう。
208 グロタンディーク(坊主頭でメガネの俯き加減の写真)登場。ピエール・カルタンによる可換環のスペクトルの形を持つ付環空間と局所同形の付環空間は、代数多様体を一般化したものと悟った。グロタンディークは概形・スキームを構想。
212 リーマン面から発想して、空間の開集合を、その空間に重ねた空間に置き換える事で、トポスに到達。同じ事は、空間状の層のなす圏を考える事でも導かれる。圏論は、1940年代にソーンダーンス・マクレーンとサミュエル・アイレンベルクによって発見されたもの。
グロタンディークはトポスを使って、数学を書き直そうとしたが、ブルバキはその方向転換はしなかった。
220 グロタンディークの数学の拒否と政治的活動か。
227 グロタンディークの著作の紹介。
232 ブルバキ没落の原因。色々あげられているが、役割を終えた、数学自体が集合論ベースではなくなった(圏論ベースなのか?)、グロタンディークを手放してしまった(これはそうだと思う)、集団主義の限界、240で改めて総括しているが、繰り返しだと思う。
246 訳者後書は、Haskellからペレルマンまで名前だけ触れるが意味が無いように思う。圏論の紹介をすべきじゃないのか?
2007.12.17
集合論に比べて圏論の方が抽象度が低い訳ではないのだから、ブルバキ衰退の原因を、理論的基盤の選択(更新)ミスとして強調するのは得策ではないと思う。圏論の説明の方が、難しいと思うぞ。

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