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2008.02.27

変態する出版

港千尋が多用する「記憶装置としての大衆」を引き合いに出すなら、衆人に隈無く配られてようやくに淘汰が始まるのではないか。とすれば出版とは膨大な投資を必要とするばかりか淘汰機能を自己の内に孕んでいるのだ。またこの場合の投資が単に金銭的意味合いとは限らず出版物それ自体や付随した行為を含むだろう。 出版が流通経路のでの販路獲得に押し込められながら細々と生き長らえている。作者と読者の出会いに留まらぬ歴史的意義など既に死滅し去った。 デカップリング・リカップリングという語を知ったのは年を跨ぐ頃に地下鉄で見た統計書類の中、様々にグラフを駆使した書類をめくるお姉さんの真剣な眼差しの先にあった。 時には派手なストラップに踊る英単語に見惚れることもある。マッチョな事務職系の中年男性が見ていたのは何かのコピーらしき紙の束で河川敷の図面が添付された積算書のようだった。そこにマーカーをぬっていた。ストラップの英単語は国土交通省という意味らしい。 帰りの電車の吊り革の下の方に浅目の紙の手提げ袋の中で黄色と紫の花が揺れているのが切り花でないのが判る。眼鏡の中年男性が座席で手にしてるのは蝶か蛾の学名が入った報告記事。クリップサービスかと思ったが単色刷りもあるのでニューズレターらしかった。外来種に関する解説を丹念に読んでいる。 昨日の朝には、ロックバンドのファンクラブ通信を読んでる女性がいた。いや違った。バンドと同じ名前のチャネリング・サークルの歴史を記述したA4用紙びっしりにプリントアウトされて、二段に組まれてたから誰かが丁寧に作ったものらしい。ファイルにびっしり紙が詰まってる様が見えた。それを読んでから入会するんだろうか、入会したから読んでるんだろうか。あるいは何かの目的で調べているのだろうか。 出版社という企業のビジネス・モデル。出版が投資だとすれば、その投資に望むリターンは何だろう。 かつてブロックバスターと呼ばれた大型のベストセラーを契約することが出版社ひいては出版文化が繁栄するとされた時代を無批判に過ごしたのではないか。業界内の流行を追いながら金銭的な隆盛を追求したに過ぎない。 DTPが広まるに連れて印刷会社の倒産が増えたのは事実だ。ワープロ程度の能力で解決された案件で飯を喰えたのだ。それまでは、どれほど有り難い時代だったろうか。 銀座の広告会社の営業をしていた後輩が言っていた。売上の半分以上は社内文書の整理とプレゼン資料への落し込みですよ。 恐らくデザイン会社と呼ばれていた所も印刷会社のようなDTPの津波に飲まれ、中小零細はデザイン・企画から製作下請けへと業態移植したろう。 出版能力に問われるのは、プリントアウトか、アウトプットなら領域は何処か。 あるいはそうした物理的な処理ではないかも知れない。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

Comments

銀座にいた後輩はその後、転職。不定休と不規則な生活に嫌気が差し地元の工場に職を得て好きなギターを弾きながら老後の中古レコード屋開店資金を作るんだとさ。
で、代理店ね。広告とは限らない。業務代理?

Posted by: katute | 2008.03.05 at 04:04 PM

或る日のこと座席で一生懸命にメモを取っている男性が居りました。どうやら2,3の資料をめくりながらひとつにまとめるように書き込んでいるようです。おや資料の題名が見えました。
「書籍販売局局長会議 会議資料」
マル秘の朱印がある資料は開いても閉じてるので、さすがに貴方様は書籍販売局の局長さんなのですね。上期の傾向から販売予想を立てている様子。それにしても、資料のレイアウトがまるで取次大手の月報みたいじゃないですか。活版の頃が懐かしく思い出されます。
今さら気が付いたけれど膝の上の社名入り角3封筒の下には読み終えたスポーツ新聞が見受けられます。
私は池袋で降りました。そういえば最近、音羽町の本を読んだ記憶がありませんね。

Posted by: katute | 2008.03.06 at 03:08 PM

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