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2009.01.24

『戦争ゲーム』

デイビッド ハルバースタム『戦争ゲーム (講談社文庫)』
この、ハルバースタムの、湾岸戦争について書いたエッセイは、現在でも中東や、対する米国の政策を理解するのに基本的な示唆に富んでいる。
それは、むしろ「第四の権力」に上ってしまったハルバースタムの皮肉な肖像とも言える。
湾岸戦争後の中東政策で語られる多くの共通用語が、ここにあると思える。
そういう意味でもこれは古典の価値を有してる。

反して訳者の言語センスと解説に、気落ちするのも避けられない。
原題はElectronic War
電気仕掛けの戦争としたら『機械じかけのオレンジ』を連想し、悪についての受けとめ方が違ったろう。
そして本書の成立過程についての説明の不足が、その後の歴史的評価を削ぐという認識の欠如。だから後書きが散漫で歴史的見地から評価に耐えないように思えてしまう。

MadernaのAusstrahlung(1971)を聞きながら。

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Comments

例えば仮に『マクルーハン理論』を対置する場合、ハルバースタムは、もうひとつの視点を持ち込む。
情報を発信した場合、メディアに係わらず敵対する相手の側の視点が存在し、そのような歴史経験的文脈から読み取るのだということ。
そこにプラグマティズムのような価値の共有は期待できず、米国の提案する自由、平等などはまやかしの幻想でしかない。これはある意味、現実主義者が陥る過ちを指摘しているのかも知れない。
そうした指摘をハルバースタムは米国側視点から行う。
いわゆる西欧や先進国という立脚点の妖しさ。

MadernaのAusstrahlung(1971)は作曲家がガンで亡くなる少し前に完成されたテープと、声楽とオーケストラの作品で、テーマは「諸行無常」だ。
古代ペルシャの詩のアンソロジーを先進国の言語で朗読する。歌手が朗誦と歌唱で、声の位相として対峙する。
マデルナの語感への感性(あいまい用語の羅列だが)が素晴らしく、声の共演は饗宴でもある。
(マクルーハンは「英語はメディアである」と指摘してる。マデルナはマクルーハンを読んでたと思う。)

または、『マクルーハン理論』が内側への探求であり東洋的な融合を提案していたのに対して、更なる深化として、自己の内なる敵を分断してみせることなのかも知れない。

Posted by: katute | 2009.01.29 at 10:58 AM

ニュー・ジャーナリズムの誤解
ハルバースタムはニュー・ジャーナリズムの旗手である。とよく言われる。
おそらく間違いではないだろう(と、こんな書き方も、それの例だろう)。
ハールバースタムが「ニュー」・ジャーナリズムとしたのはケネディー政権が次々とキャッチ・フレーズを発明したことへの皮肉だったのではないか。
そうでないなら、ハルバースタムの翻訳文のつまらなさはどうしたことだろう。
原文で読むとハルバースタムは面白い文章を書いてるのじゃないかと勝手に思ってる。誰が訳そうと文の勢いが削がれることはなく訳者の癖をきれいサッパリ押し流してしまうから。
ならばトム・ウルフじゃなくハルバースタムを青山南あたりが訳すべきだったろう。
ジャーナル、日録を打ち破る行為としての報道(主には調査報道という過去を遡り現在を照射する手法を用いた)という意味でのニュー・ジャーナリズム。こういう文脈でようやくにして『マクルーハン理論』と対峙できる。
メディアの批評家としてのハルバースタム。
あるいは20世紀の新聞の発明、それ以前の都市国家での手紙の発明、言語記述とその発展段階を、口語文化と記述文字文化、メディアと人類の意識の変化を追って考えてみたい。

歌?
新聞や、旅行案内などを歌ったり。

マデルナでもう一曲、注目したいのが亡くなる前の72年、タングルウッド音楽祭のために書いたGiardino religioso。
作品の依頼主Paul Frommへの感謝を込め、フロムが持っていた庭に想を得て(frommはドイツ語のreligious)タイトルを付けた、と。
作品は庭を愛でるように、オーケストラの各パートに指揮者が歩み寄り任意のスコアを演奏する。アーティキュレーションは記されてない。
指揮者が楽団の間を歩き回ることで演奏され作品が出来上がる。
これはある種のクラウド・シンキングだが、今なら指揮者は一人とは限らないだろうと思う。

Posted by: katute | 2009.01.30 at 10:41 AM

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Tracked on 2009.01.29 at 10:15 PM

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