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2009.04.11

『おとなしいアメリカ人』

面白い小説だ。
始めの一部を除けば主人公の視点から一人称で書かれてるので、小説世界に没入しやすいためだろうけど、主人公は清廉潔癖で勇敢な訳でもない。
取材記者(リポーター)だと何度も念を押す(論説委員への栄転も拒む)。
そうした方法で表される出来事や登場人物の陰影がさり気なく深められているのが心憎いほど見事だ。
世辞的な背景や歴史的な評価は翻訳者の解説に詳しい。
アメリカがインドシナに軍事顧問団を派遣する以前から“経済アタッシェ”を送り“民族派”「第三勢力」を支援する活動を行なっていることが取り返しの出来ない現実を生み出す、というのが主なストーリーだ。
もちろん、しっぺ返しを目論んで他人の力に縋りながら安穏な日常を継続する英国人である主人公の姿も批判の対象であるだろう。
もちろん細部には東洋と西洋の理解できない姿も象徴的に書き留められてある。戦闘の恐怖や悲惨も。
読後の印象として残るのは、日常に挿入された細部なのだ。

例えば、昨日テレビで見たスピルバーグ「宇宙戦争」THE WAR OF THE WORLD の映像が見せる暴力には驚いたが、戦争行為を受ける側の一般人の目で見た戦争の理不尽さを突き付けるまでは描かれていなかったので、原作のオチが唐突にスーパーで解説されても、なぜ戦争が起きたのかが理解できず不満を募らせるのみだ。
原作者もまた第一次大戦に非常なショックを受けた英国人だった。戦闘行為の野蛮を告発するため表現としてスピルバーグの映像に、その力どころか、目的すら感じられなかった。

THE QUIET AMERICAN by GRAHAM GREENE
英語の皮肉さが日本語タイトルに出てない、それにグレアムてのはイギリス訛りなのかねぇ。
それにもかかわらず、50年代の言葉を今読んで面白い。

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