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2009.06.04

読了『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』


ダン アリエリー『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』

大変面白かった。行動経済学の本なのだけれど、やはり、これは『正しい科学としての心理学』の1つだという思いを強くした。
表題の通り、経済的人間に仮定されている合理性とはかけ離れた行動をするのが、普通の人間だと言う現実を実験で明らかにして行くと同時に、そこに、一定の規則性、ルール、を見出して行く過程は、本当に、実験科学の鑑だ。
また、実験が出来ないとする通常の経済学とは違うところでもある。
私の個人的な感想で言わせてもらえば、個々の人間の行動に焦点を当てると行動分析学、集団としての人間の行動に焦点が当たると行動経済学と呼ばれるのではないだろうか。
その意味で、本書が明かす人間像は、非常に合理的だ。同じ条件下では、常に一定の結果が得られる、予想し易いのだ。但し、その予想は、『予想どおり不合理』に見えるのだ。恐らく、判断と言う無駄な作業を減らす進化圧が、現代人の行動を形成したのだと思う。
章毎の感想は続きで。

目次
はじめに
一度のけががいかにわたしを不合理へと導き、ここで紹介する研究へといざなったか
1章 相対性の真相
なぜあらゆるものは――そうであってはならないものまで――相対的なのか
2章 需要と供給の誤謬
なぜ真珠の値段は――そしてあらゆるものの値段は――定まっていないのか
3章 ゼロコストのコスト
なぜ何も払わないのに払いすぎになるのか
4章 社会規範のコスト
なぜ楽しみでやっていたことが、報酬をもらったとたん楽しくなくなるのか
5章 性的興奮の影響
なぜ情熱は私たちが思っている以上に熱いのか
6章 先延ばしの問題と自制心
なぜ自分のしたいことを自分にさせることができないのか
7章 高価な所有意識
なぜ自分の持っているものを過大評価するのか
8章 扉をあけておく
なぜ選択の自由のせいで本来の目的からそれてしまうのか
9章 予測の効果
なぜ心は予測したとおりのものを手に入れるのか
10章 価格の力
なぜ一セントのアスピリンにできないことが五〇セントのアスピリンならできるのか
11章 私たちの品性について その1
なぜわたしたちは不正直なのか、そして、それについてなにができるか
12章 私たちの品性について その2
なぜ現金を扱うときのほうが正直になるのか
13章 ビールと無料のランチ
行動経済学とは何か、そして、無料のランチはどこにあるのか
謝辞
共同研究者
訳者あとがき
参考文献
原注

13章を除けば、目から鱗というよりも、そういう風に考えてるのか、ということが多かった。
2章のアンカリングの話で、保健、医療、水、電気、教育等では、需要と供給による自由市場の仕組みが効用を最大化出来ないことを明らかにしただけでも、大きな功績の筈なのに、現実には採用されそうも無い。私は、この点で宇沢氏の理論に引かれる。
3章の無料についての考察。無料は、実際の隠れたコストを考えなくさせる点で、非常に強力なマーケティングと言える。一見すると、失うものは何も無い状態だから、無料にすれば、色々なことを(知らず知らずの内に)強制的に選ばせることができるのだ。
4章の社会規範と市場規範。これは、相反するが、思いの外、強力な行動規範だったことが判った。社会規範をマーケティングに応用する危険性をもう一度考えた方が良い企業が沢山ある。二股は不可能だと完全に理解するまで、社会規範を使おうと思ってはイケナイ(そもそも、企業は使うべきではないだろうな。社会起業家やオープンソース運動はここに、その基盤があるんじゃないだろうか)。
5章は、尤もなのだ。普段の自分は、見知らぬ自分を想像することすら出来ない。ちなみに、出産の痛みが、氷水に2分間手を浸けたままにしたときの痛みと同じだとある。この比喩は初めて聞いた。
6章の自制するクレジットカードの仕組みは、面白い。『事前』に『自分で』各出費に上限を設定して、ペナルティ(上限を超えると配偶者にメールで知らせるとか同額を寄付するとか色々)を課すもの。この、『事前に』『自分で』が一番効果的だそうだ。
7、8章は、基本なのだが、『目の前の利益』の他は見えにくい、の一言に尽きると思う。
9章。予測の効果だが、これは予測というより、予測させるための刷り込み、ではないだろうか。10章のプラセボと同じなので実際に効果的。バルサミコを垂らしたビールが結構ウマいらしいのは、驚きだが。
11章。普通の正直な人も誤摩化す。誤摩化せる時は見つかる可能性には考えが及ばない。しかし、無制限に誤摩化す訳でもない。著者の言う正直モニターの考え方は便利(正しいとは限らない)。大きなことにはモニターが警告をするが、小さいことには稼働しない。
お金を扱うとき、宣誓をした専門職の持つ、責任、正直さは、適切な方法(誘惑に駆られる瞬間に、十戒を思い浮かべさせるとか、規則に従うという文面を読ませるだけで十分)で回復させることが可能。
12章。なぜ、お金だと抵抗があるのに、備品や書類上の数値(代用貨幣)だと不正が働けるのか。強盗よりも、備品持ち出しや不正な返品の方が全体的には被害が大きいのは何故か。この章だけ、著者は対策を挙げていない。
13章。同じテーブルで注文がダブらない理由。対策は、事前に注文を各自で相談せずに決めておくこと。
実は、この章が一番、心理学っぽい。経済学が仮定する人間像に反旗を翻している。
参考文献は原書のままかな、独自に足してはいない。原注もそのままなのは、どうにかして欲しかった。

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Comments

著者サイト
http://www.predictablyirrational.com/

Posted by: 本人 | 2009.06.04 at 01:03 PM

トラックバックの[金融 日記]は、偽物でしょ。

Posted by: 本人 | 2009.06.10 at 01:06 PM

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