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2009.06.23

読了:『現代思想 2009年5月号』 ケインズ 不確実性の経済学の特集だけ


青土社『現代思想2009年5月号 特集=ケインズ 不確実性の経済学』

小島先生の現代思想『特集ケインズー不確実性の経済学』を読んでから、借りてみた。他の連載とかは読んでません。読んだ部分にだけ、コメント続けておく。 目次は、青土社のバックナンバーのページから。

特集=ケインズ 不確実性の経済学

【ケインズと現代】
ケインズの思想 / 伊東光晴
うっかり読んでしまった。判り易いと言うか、ケインズ入門。気になった箇所の概要:19世紀科学の王道の還元主義で解けない問題としてベルグソンが価値を挙げたように、ケインズらもムーアによって同じ問題を提出され、価値は直覚の問題、善は定義不可能、直覚のみによって理解されるので、その直覚を磨くために、精神の貴族たるべく修行した。これが後の経済学体系を構築する際に役立った、何に、重点を置くかは、直覚によるしか無い、と。
当時の株式市場の英米での違い、英国は売買自体が面倒でコストが掛かるため、短期の売買による売買益よりも保有による配当益が重要だった。米国は効率的な市場だったが、短期売買による投機化によりバブル(暴落)が。
ケインズは、遺産への累進課税も提言。要は、利子生活者を敵と見なしてた訳か。
まとめ、5つの考え:19世紀科学主義に代わる20世紀科学主義。方法的個人主義の否定と不確実性。大衆社会の密やかな予見。多元主義。平和主義−海外市場優先(戦争による領土拡大)主義の否定。

ケインズ=ベヴァリッジの時代を振り返って / 宇沢弘文
資源配分の効率化、公正化、政府による積極的介入が、ケインズの理念としている。インドでの仕事(インドが英国の軍備を全額負担とかいろいろやってた訳)がその懐疑の基礎になったとも。
ベヴァレッジ報告の生まれた経緯は、気骨と言うか。揺りかごから墓場までの大本。これがサッチャーにより、破壊された。内部市場制度の導入。この制度の発明者は、アラン・エントホーフェン。ベトナム戦争中に、Kill-Ratio(ヴェトコン一人を殺すのに掛かる費用による指標)を開発した。同じく、患者一人が死ぬまでに掛かる費用を最小にする指標を導入、って、何もしないで殺せば最も安いのでは。
宇沢先生は、ベヴァリッジを紹介されたかったのだと理解。

【危機の経済学】
考えられない破綻がケインズを蘇らせた / ロバート・スキデルスキー (訳=平井俊顕)
えらく短い。

ケインズと恐慌 / アクセル・レィヨンフーヴッド (訳=佐藤隆)
実体経済がカジノ(金融経済)の陰謀によって支配されるのを許してはならない、でも、これを聞かない人達に読ませるべきは初期論文だと。信用収縮の元が、将来の収入不安による支出収縮、投資の収縮、と繋がる流れが分析されている、と。
現代金融論の、将来収入が正規分布に従うと言うことへの批判。

いったい誰がケインズ主義者なんかになるのか / メグナッド・デサイ (訳=沖公祐)
短くて威勢がいい。

【資本主義の転換】
なぜアメリカの景気刺激策は失敗する定めにあるのか / デイヴィッド・ハーヴェイ (訳=長原豊)
言葉が難しい。

資本主義(市場社会)はいずこへ 転機のマニフェスト / 平井俊顕
言葉が。社会学者っぽい書き方と思う。

【貨幣】
不況への新たなアプローチ 『一般理論』 を読み直す / 小野善康
ケインズに金の分配という発想は無かった、社会の効率を向上させろといているのだから、失業という最も非効率な事態を招く政策は、ケインズは言わなかった。要は、ケインズ的政策という名目でばらまきをやっても、それはケインズではないと。ケインズの問題意識は、総需要の減少。失業対策とかは結果の話であって、それが目的ではない。「流動性選好」は誤解を招く、貯め込むことそれ自体が動機になる、これが根本。それ以外はケインズによる理論的なこじつけ。バブルやインフレで実体経済以上の資産価値が失われる(これの原因を流動性選好)と、総需要をどうにかしても、現金を刷ってもどうにもならない訳。やはり、判り易いし、理解し易い。

【不確実性】
『確率論』 のパースペクティヴ 多元的な不確実性の論理 / 伊藤邦武
ケインズの説く、「客観的確率」は、人の無知や信念の度合いではなく、命題間の関係に確率を賦与する立場、って、これは聞いたことが無かった。プラトン的と言うか。

「時間」 と 「不確実性」 の理論 / 小島寛之
流動性:何でも買えること(小野先生。モデル化がまだ)、将来不安不況説(松原隆一郎)、曖昧な消費(小島。何でも買えることをモデル化する試み)。ゲーム論的アプローチで、小野先生の貨幣に対する限界効用が高止まりする理由が無い点、不均衡による物価下落(関数)の理由も無い点、これらは、ケインズの時間論(即時何でも反映する経済学の仮定ではなく、時間がかかって反映して行くと言う)の導入。協力ゲームによる解読。これらのヒントを元に、新しい経済学を打ち立てよう。

【国家】
ケインズへの回帰なのか / アントニオ・ネグリ (訳=長原豊)
ネグリだ。

ブリダンの驢馬と血気 ケインズの〈永遠の現在(いま)〉 / 長原豊
『ブリダンの驢馬』秣と水の間に立って、どちらも選べずに驢馬が餓死するというスピノザの譬え。『血気』を奮い立たせる条件を内部観測的に外部注入し、その鼻面を持って、秣を喰わせ水を飲ませる行為を、僭称された合理、理性によって引き受けるのが国家だと。

ケインズ主義の可能性と限界 カレツキ経済学の視点から / 鍋島直樹
『完全雇用政策に対する反対には、政治的な背景があるとした。』マルクスとか以外でも、そうなんだな。資本家と労働者という相対立する2つの階級の政治的圧力の相互作用により一定周期で人工的な景気循環が生まれるだろうと。実際には、数十年の周期であれば、現実と整合する。
どうでも良いことだが、『カレッキ』では無いのか。

【理論】
ケンブリッジ学派の雇用・利子・貨幣理論とケインズ / 伊藤宣広
有名な『長期的には我々はみんな死んでいる』はまだ公共事業に否定的だったケインズが言った言葉。マーシャルによるケンブリッジ学派の流れの中でのケインズ理論という側面からの解説。これも判り易い。

ケインズ、その可能性の中心 / 吉田雅明
マルチエージェントベースの(シミュレーションによる)学史研究。ケインズの対象テクスト、「ケインズの貨幣論」の分析。面白い、全体整合性云々抜きで、経済システムを多数の安定的平衡点を持つシステムとして描けるのは、なるほど。小島先生のアイデアが不整合に含まれている説にも通じるか。

■研究手帖
  脳と体を創造する / 増田靖彦
全然別だが、これも面白かった。脳地図とホムンクルスから、神経回路のネットワークとしての理解、個々人で異なるだろうとの推測。いいなぁ、ちゃんと考える人は。

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http://heibonshatoday.blogspot.com/2009/06/blog-post_23.html

Posted by: katute | 2009.06.24 at 04:34 PM

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