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2009.07.29

CD試聴記

異国趣味/異国情緒

KINSHIP
Maya Beiser

JONATHAN HARVEY
MADONNA OF WINTER AND SPRING・PECUSSION CONCERTO・SONG OFFERINGS

NYMAN EDITION No1: Concertos

THE GOREY END
THE TIGER LILIES

異国趣味/異国情緒

KINSHIP
Maya Beiser
中東から東南アジアに広がる弓で弾く弦楽器に、アノニマスに、その音程と技術と発声を以て参加するチェロ奏者。
ここで政治を語るのは順当でないだろうけど、日常で抱いている政治地図と、この音楽が一致するか自身を試す必要に迫られる。音楽パフォーマンスを聞き解説を読むほどにそうせざるを得なくなる。
もう少し狭い意味で、豊かな微分音と多彩なノイズは多重録音だからクラシックじゃないとか、もちろん、そうしたことは一切無視して音楽にだけ耳を傾けているのも選択肢としてある。
ウードにオブリガートするリム・ドラム付きのセッション。グレゴリオ聖歌に現出する瞑想空間。ケチャを再現するガムラン仕立て。カンボジアの憂愁。など、出自そのものさえ問うべき作品で満載だ。

JONATHAN HARVEY
MADONNA OF WINTER AND SPRING・PECUSSION CONCERTO・SONG OFFERINGS
ゴリゴリではなくバリバリのゲンダイオンガク。大きい音と奇抜な音に溢れてる。
私的な偏見として、一面において、宗教神話やタゴールの詩といったインド趣味などは植民地の後遺症なのだろうか。そうするとポスト・コロニアルは二日酔いみたいなものか?
極端になるが、英国人ハーヴェイが取り上げるエキゾティズムは音響素材としてより以上のものではないのかも知れない。フランスのトリスタン・ミュライユのアフリカ(ゴンドワナ)のように。
シンセとミキサーを投入して演奏会場内の音響を操縦しようという試みは、スペクトル楽派とは別物だ。こうなったら会場で聞くしかなくて録音じゃ残念だろう。もしかするとそれはマデルナのシュトックハウゼンについてのコメントに通じるかも知れない。
しかしながら、そんな心配(?)は、そうした野心が萎んでしまったのか、四楽章の交響曲であるMADONNAの初めの楽章だけ。
また次の、エヴェリン・グレイニーのために主に鍵盤打楽器がポツポツとした若干スイング調なつぶやきを聞かせる打楽器協奏曲。難しさは恐らくソリスト、指揮者、オーケストラ間の意志の疎通、情報伝達だろう。その難しさのためか、彼女のために書かれた音楽で胸のすくほど心が動いたものに出会った試しがない。
タゴールの詩による歌曲集は、ピアノ伴奏でも同様な試みがあったと思う。ハーヴェイの音遣いは実に達者で、声楽の言葉を聞き取らせようとする努力のお陰で、肝試しの夜を期待させる。夏だからね。

NYMAN EDITION No1: Concertos
サックスとチェロの二重協奏曲はマツダUKの委嘱で、英国での事業展開の心意気を表現する意義深い作品であると依頼者のコメントにあるように、作曲家の仕事も多岐にわたりなかなか大変なもののようだ。音楽はフォークロアの情緒薫る爽やかな佳作。
ハープシコード協奏曲の、積み重ね、積み重ね、積み重ね! ホイナツカの音楽消化力の気迫。即興音楽の興が乗るまでの繰り返しを表現したミニマル手法の見事さ。
トロンボーン協奏曲の爆烈パワー。パーセル没後300年でBBCに依頼されて取り入れたのはrough musicのスタイル。日本では「えぇじゃないか」に相当すると思う、町人の乱痴気騒ぎで、騒音を出すため日用雑貨を打ち叩きながら練り歩いたらしい。だから音楽は幾通りにもノイズをまぶして互いを曝そうとしないかのよう。メランコリックもあるがお祭りだ。パーセル古楽から取られたフレーズが現代風のワルに聞こえるのが愉快でイカしてる。
こんなパワフルなミニマリストがクラシック作品をもう書かなくなってしまったらしいのは残念だし、逆にナイマンにこんなにクラシックめいた作品も珍しい。
EMIのお家騒動でシリーズの約束を破ったから絶版なんだろうか。

THE GOREY END
THE TIGER LILIES
今となっては何でもかんでも死んじゃったって言うのはさすが不謹慎だろうな。
とはいえ少し前まではそうした皮肉屋は世間では尊敬されてたと記憶してるし。
で、なければゴーリーがツアー先に未発表作品を送り付けたりしなかったろう。
ケープ・コッドは行かず仕舞いだからザ・ゴーリー・エンドて訳なんだろうぜ。
つまりハッピー・エンドやジ・エンドなんかの仲間だろうけど、まるで違うぞ。
改編された歌詞の韻律がお気に召さないか、グロテスクさが足りないか、絶版。

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Comments

訂正:
「タゴールの詩による歌曲集は、ピアノ伴奏でも同様な試みがあったと思う。」
は誤り。強いて言うならボードレールの観照。

Posted by: katute | 2009.07.31 12:04 PM

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