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2009.07.16

読了:木下 玲子『プライズ―「九つの賞」の背景』

木下 玲子『プライズ―「九つの賞」の背景』
順番を違えてしまったけれど、ようやく、3部作を読み終えた。中々、手に取れなかっただけで、読み始めたら、二日で終わってしまった。目次を見ると、プロローグにある通り、『賞』が持つ2つの意味、リウォードとアウォードのうち、功成り名を遂げた者に与えるリウォード(功労賞)では無く、これから優れた才能を伸ばして欲しい若い将来性に期待して与える、アウォードだけを取り上げている。

目次
プロローグ
プーリィツァー賞―ジャーナリズム最高の栄誉はいかにして選ばれるか
マグサイサイ賞―フィリピンに生まれた「アジアのノーベル賞」の理想
マッカーサー・フェロー―米国再生への情熱を受け継ぐ「天才賞」の内幕
ジョージ・F・ケナン賞―米国随一の戦略家の名を冠した賞はいかに誕生したか
トーマス・クック・トラベル・ブック賞―「旅行の父」の思想を伝える賞を生んだ英国の伝統
フォーリン・ボーン賞―外国生まれの米国人を讃える移民国家ならではの賞
マルコム・ボールドリッジ賞―国際競争力回復を夢見る米国企業の新しい挑戦のために
グローバル500賞―毎年百人の環境専門家を顕彰する国連環境計画の理想
ベルリン国際映画祭―カンヌ、ベネチアとは一線を画す「金の熊賞」の個性
世界名賞の舞台から―賞を輝かせる舞台裏のエピソード、取材余話

プーリツアー賞のハルバースタムが言う、『受賞する記者というのはどうやっても受賞するように運命づけられていると思う。つまり彼らはギフテッドなのだ』。事実を伝える勇気を持つと言う米国ジャーナリズムの基本スピリットを啓蒙してきたのだ。
マグサイサイ賞韓国出の受賞者、オーガスティン・カン。ドイツ生まれの頼母子講のようなクレジットユニオンを韓国で広めた功績。
マッカーサーフェロー。あのケチで有名なジョン・Dによる創設。遺産の使い道として。「次の時代のモーツアルト」を見出す賞と言える。受賞まで極秘。勝手に5年間賞金を与えられるだけで何の義務も無い。スゴい。「落ちこぼれ」を歓迎し「失敗する自由を与え」、「博士号も必要無ければ」「天才などではない」、自分の創造力を大切に努力する人々を励まし支える姿勢。この章の締めくくりは、大手自動車メーカーに勝負を挑んだタッカーだ。これだけで、著者の姿勢がよく判る。
ジョージ・F・ケナン賞は、ケナン自身とのインタヴューが目玉。ケナンの洞察が今も生きているのはビックリだ。
トーマスクックは、意外に歴史が浅い、新しい賞。有閑階級(チャッタリングクラス)の教養の在り方に基礎を置いていたのか。知的にファッショナブルとは、「発想の新鮮さ」、「他との差異」、「クオリティが本物」の3つを兼ね備えたもの。なので、ベストセラーには用が無い。ギリシャ時代から1980年までの本で賞を与えたいのは、という質問の答えに、フンボルトとボンプランの「新大陸への旅」が入ってる。知った名前を見るのは楽しい。
フォーリンボーンは、米ミノルタの楠本氏。相互協力無しには、ビジネスによる貢献は無い。祖父が『韓国のヘンリーフォード』の異名を持つそうだ。
グローバル500は、まず、ペンギン専門の写真家、ゼンダー。
ベルリン映画祭。初めの30分、終りの30分。シナリオは読んでる前提なので、これで見るべき映画かどうか決めて行くそうな。しかも、外部に一切経過を知らせない秘密主義、政治志向。しかし、ドイツは(自らが団結するために)弱い敵を求め始めているという指摘を、内外からする。市民レベルの差別と、それに対抗する個人の密やかな戦い(バスの中で助言する学生)。
後書きの、プーリツアー賞のクリストファー氏は、個人を部分ではなく全体で受け止めようとする努力、機会とは個人のあらゆる条件を考慮する前に与えられるべきとする発想。これが、「ギビングの精神」ではないかと著者は言う。
マッカーサーフェローの財団が受賞者を探す為に必要な、広範で多岐に渡る清廉なネットワークの達人の条件として、「有能な探偵」、「教育家」、「慈善家」をあげる。これは難しい。
天才も市民が作る、これか。
日本、中国で、こういう発想は可能か。打ち上げ花火のようなイベントとしての賞ではなく、社会に伝えるメッセージとしての賞。これが肝だと。

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