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2009.09.04

マルグリット・デュラス『愛』


マルグリット デュラス『愛 (河出文庫)』

意外だった、この作家にそんな気前の良い題名が付けられるとは。 どう見積もっても、分け与えてはくれそうもない。そうじゃないか? それでも風通しの好い海辺で、冗舌な独り言が記述され、乗っけからふんだんに散りばめられているのは、場違いなほど、これまでと打って変わった映像的な情景描写。映画的だけれど心理的なト書に溢れているために、撮影は第二班がインサート画面として処理するのだろう。 仕立て方の教科書。そう、またしても脳内映画だ。 例えば、そうだね、ヴィム・ヴェンダースが撮った「


ソラリス

」を考えてみる。(兄:実際にリメイクしたのは


ソダーバーグ

) こんな場面がある。少し隙間から覗いて見えるのが何を暗示するのかは判らないが、大変な魅力となって読者に推進力を与えるのだ。

  彼女が離れてゆき、彼が呼びもどす。彼が訊く--

   「S・タラというのが、ぼくの名前なんですか」
   「ええ」--彼女は彼に説明し、さし示す--「あらゆるものが、ここではあらゆるものがS・タラなの」

  彼女は離れてゆく。彼は呼びもどさない、彼女は海にそってゆく。

これは小説でも戯曲でもなく、どんなセグメントが可能なのか、散文詩でもシナリオでもない。
それで登場人物の対話として作家が書き留めた中断される断片化したイメージまたは直ぐに言い加えられる言葉は、または彼と彼女たちを取り巻く情景(その緩急自在な時間尺は読者の呼吸に任せっ切りだが)は、例えば、愚かさが賢さを差し引いた凡庸なものではないように、この『愛』は、無関心を差し引いただけ、ではない。
で、なかったら、地獄のような光に晒されて眠ったりはしないし、町の中心部に火を放つ分身として登場したりしない。
浜辺の砂による腐食だったのか。

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Comments

ソダーバーグ?
違うよ、ヴェンダースが撮ったらってこと。
だからリンクは敢えてタルコフスキーが良い。

Posted by: katute | 2009.09.08 at 02:05 PM

直した。これでいいのかな。

Posted by: 本人 | 2009.09.08 at 05:37 PM

直したのね。

ハリウッドがソロバンに合わない映画を作るのは政府要請によるのだろう。つまりソダーバーグ版はポーランドへの文化的(?)コミットメントじゃないか、と。まぁいいや。


「ルース新駐日米国大使」て記事にこうある。
http://tokyo.usembassy.gov/zblog/j/zblog-j20090820a.html
ルース大使がシリコンバレー最大手の法律事務所で、非常に大きな成功を収めた最高経営責任者だということでした。

日本で腕を振うとしたら今後そういう方面なんだろうか?

Posted by: katute | 2009.09.09 at 10:59 AM

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