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2010.01.30

『食べられる女』


マーガレット アトウッド『食べられる女』

私の絵には塗り残しがないのよ、と言わんばかりの描写力で、読んでる内に自分が歳を取っていくのではないかと思えるほどページをめくった気がする。 そう思ったのはトーベ・ヤンソンと混同した印象を抱いてるため、簡潔な表現の少ないページ数で最大効果を狙うものと勘違いしてたからだ。と言うのも困ったことに、アトウッド『浮かび上がる』がヤンソンの孤島生活に侵食してしまって互いを切り離せなくなってる。 ともあれ、処女出版には作家の総てがあるとは良く言ったもので、ここには『侍女の物語』『浮かび上がる』『青髭の卵』など後の作品となるテーマが開示されてる。 それに執筆(1960年代)ならびに翻訳(1990年代)された時代の文化や言葉が活写されてるのも読んでいて愉しい。 タイトルが様々な空想を呼び覚ますので通勤電車で読んでいると驚かれたこともしばしば。偶然に向かい合った老若男女の当惑した目がこちらへ抗議と猜疑の好奇心となって向けられるため何度も、作者マーガレット・アトウッドを恨んだり、タイトルの日本語訳に工夫が足りないと考えたりもしたが、読後となってみればと、そうした事柄も作品の味わいを損ねていないと気付く。

ちょっと脱線すると、この何事にも淡々としている記述の冷静さが却って情景を伝えるのに邪魔な箇所(例えばカバー写真が捉えた吹雪の日。とてもひっそりと日常が押し潰されてるのが不気味だが恐れよりもその皮肉に頬を引きつらせるのだ)があるものの、作家は大学院でドクター論文を気にして、この作品のことを忘れてたようなことが序文に記されてるので、物語の視点の移動と、自己の投影を何処に見るかで奥行が変化するのも、なかなかに面白い仕掛けだと思う。
自分が見てこなかった世界の片側、その隅々にまで目を配るようにしてあれやこれやと思い煩いながらも何事もなかったように日常が過ぎていくのも、読んでいる自分がページを延々とめくり続けて歳を摂っていくような印象を強めてるのだろう。

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Comments

ある意味、ポー・ブロンソンが最近追ってるテーマの女性版。

Posted by: katute | 2010.02.04 at 11:54 AM

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