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2010.04.27

読了:マーカス・デュ・ソートイ『シンメトリーの地図帳 (新潮クレスト・ブックス)』


マーカス・デュ・ソートイ『シンメトリーの地図帳 (新潮クレスト・ブックス)』

自分のつぶやきから:シンメトリーをめぐる群論の誕生とモンスターの捕獲による完成の過程を論じつつ、著者の個人的な数学者生活、現代の数学者たちも生き生きと描いた傑作 面白過ぎて、書きたいことが多過ぎて、結局、マトモな書評は書かないことにした。いつもの通り感想文。

40歳を迎えたデュ・ソートイ氏の1年の数学者生活、私生活を振り返りながらの記述、方程式の解法の探求から始まって、5次でのアーベルによる否定的解決、ガロアによる群論の構築、そして、群=シンメトリーの図式は必須だったなぁ、と改めて、感動した(その後に、高次元での対称群、本番のモンスターの登場と狩りなのだが)。
配られた手札で勝負するということを受け入れて久しいが、数学者としての生活に、苦しいことのあるも然り乍ら、羨ましくもあるのが、正直な気持ち。
また、書き出しが、何故、40歳なのかもグッと来たポイント。数学者なら、自分の身の程は知っていても、このことは考えずにはいられないからだ。
息子(?後で種明かしされる)とアルハンブラ宮殿でシンメトリーを探した際に、息子が任天堂DSのカメラ機能を利用するところ等、今風だ。
アーベルが後もう少しだったが、ガロアによる群論の誕生とその発展に続く、ハミングらの符号理論での高次元のシンメトリーの”発見”というか、応用で活気づいた群論を、明確に、高次元の行列で表現される置換群で考えるという書き方は判り易いので、副読本にしたらいいと思う。
そして、その枠の中で、分割不可能なシンメトリー群が分類可能ではないかという大予想と、その解決の道筋が、著者のエッセイと交互に語られて、メインストーリーを形作って行く。
個人的にやっぱり不思議なのが、特定次元でだけ成立するシンメトリーがあるということ。また、シンメトリーの例が豊富なこと。ここが面白い。でも、目次を見ても(普通のエッセイっぽいタイトルしか見当たらないので)、何が書いてあるのか、判らない本でもある。
登場人物の中で、特に生き生きとしているのが、著者のヒーローらしいコンウェイたち。海賊船と船長になぞらえられた奇人集団。超人的な記憶(漢字トリビアでよくある京垓よりも上の数字だけでなく、その次元数での行列で表される変換群を想像する)で新入りを煙に巻いたりする茶目っ気がある才能豊かでおかしな人達。幾人かはどうも自閉症あるいはアスペルガーではないかと思っていたが、その一人、フィールズ賞受賞者のボーチャーズはバロンコーエンにインタビューされていたそうだ。でもここに描かれている通りなら、確かに、その傾向が強い人なのだろうな。とは言え、この人のフィールズ賞受賞時の感想は、多くの数学者には刺さるのかも。
読んでいる最中、(あのクヌースが小説のネタにした)超現実数を考案した人とあったので、コンウェイをもっとずっと年寄り(あるいは故人かな)と思っていたのが違ったのか(「本当はずっと若いのか」)と驚いて、更に読み終える辺りで、再度、その時点での時代とかを考え直して、相応の年配者だと再認識した。それにしても、(意地を張って)サヴァンの特技と思われる曜日計算を独自に編み出して、若い女子院生に試したり、何度も結婚したり、私の父より1つ下らしいが、落ち着かない人である。
対して、著者のデュ・ソートイ氏は、養子縁組の話等の私事を包み隠さず書き記しているし、科学啓蒙のための功労によって大英帝国勲章を授かる等、大人な雰囲気なのだが、著者近影が、いわゆる、英国の怪しいデザイナー風で面白い。
読了後、Tomo’s HotLineさんの[書評]シンメトリーの地図帳 (マーカス・デュ・ソートイ)を見つける、これは素晴らしい
meggy's journalさんのシンメトリーの地図帳を発見。アッサリ目ですが、キチンと書かれてますし、著者、デュ・ソートイ氏の動画へのリンクがあります。
ついでに、黒川氏のお嬢さんのブログでも言及がありました。

ちなみに、amazonには目次が省略版しか載っていないが、本書の目次はもっと味わい深い。以下は出版元からの引用。

マーカス・デュ・ソートイ 冨永星『シンメトリーの地図帳』|新潮社より引用:

第一章 八月――終わり、そして始まり
八月二六日正午、シナイ砂漠にて/自然の言語/シンメトリーを探し求める人/船出/八月二六日真夜中、シナイ半島の砂漠にて
第二章 九月――さいころの次の一振り
九月一日、ロンドン北部ストーク・ニューウィントンにて/九月一〇日、ロンドンの大英博物館にて/ピタゴラスと「一二枚の正五角形からなる球」/プラトン――現実から抽象へ/数学的な証明
第三章 一〇月――シンメトリーの宮殿
一〇月一七日、グラナダへの途上にて/宝探し/三角形と六角形、そして旋回と奇跡/隠されたシンメトリー
第四章 一一月――一族の集結
一一月一日、沖縄にて/ひどく興奮しているものと、無数のもの/パターンの狩人/緑色のズボンと緑茶/ブラックボックス/数学の探検/数学と歌舞伎――選ばれた者のための劇場
第五章 一二月――つながり
一二月五日、ボンのマックス・プランク研究所にて/数学の詩――方程式の謎を解く/数学における闘鶏/三次方程式に関する論争/一二月一二日、マックス・プランク研究所にて
第六章 一月――不可能
一月二三日、オックスフォードにて/マゼラン海峡の向こう側をのぞき見る/精神的な苦痛はけろりと忘れて/解をシャッフルする/つむじ曲がりのコーシー/ルッフィーニの小さな間違い/「打ちのめされたあなたの友より」
第七章 二月――革命
二月一三日、パリ、ラ・ヴィレットにて/自由と平等と友愛/あなたの方程式はどんな形か/行方知れずになった手稿/革命/裁判にかけられて/数学による現実逃避/コレラの時代の愛/二月一三日午後、パリ、ラ・デファンスにて
第八章 三月――見えない姿
三月一七日、ストーク・ニューウィントンにて/数学の小包/素のシンメトリー/カードを使った手品/タフな男とハンサムな男/法律の条文を応用する/三月二八日、ストーク・ニューウィントンにて
第九章 四月――シンメトリーの音
四月五日、ロンドン・ブリッジにて/三二楽章の中のシンメトリー/パターン探し/鐘の鳴らし方を変える/四月五日、テムズ川の泥の土手にて
第一〇章 五月――開拓
五月四日、オックスフォードにて/おいしい正四面体と毒のあるピラミッド/ウィルス――シンメトリーなくしゃみのもと/頭の中の鏡/ばれてるよ/エラー探しからエラー修正へ/五月一六日、イェルサレムにて
第一一章 六月――散在
導火線に火をつける/ヤンコのブックエンドの片われ/「大きくなったら……数学者になりたい」/二四次元の食料品屋/シンメトリー群の宝箱/フィッシャーの不死鳥/六月一四日、ストーク・ニューウィントンにて
第一二章 七月――モンスターを照らす光
ムーンシャイン/数学界のフランケンシュタイン博士/七月五日、エジンバラにて/ムーンシャインを求めて/表が出たら行かない
謝辞
訳者あとがき

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